獣医夫婦と暮らす元保護犬マルコの生活。

北海道や海外旅行で気をつけたい病気【エキノコックス】

こんにちは♪

先日の北海道旅行記に関連して
病気の話をひとつ。

北海道に在住の方はよくご存知だと思いますが、
わんこも人もかかる病気、人獣共通感染症のひとつである
エキノコックス症」についてまとめてみました。

905461590_f2cd279fe5.jpg
by peupleloup

エキノコックス症とは
エキノコックスという寄生虫(成虫体長3~4mm)によって引き起こされる病気。
主にキツネなどの肉食野生動物(終宿主)とノネズミ類(中間宿主)の間で流行している病気。
問題なのは、犬や猫に感染(終宿主)し、ヒトへも感染(中間宿主)する こと。

※終宿主とは…幼虫が成虫になって卵を生んだりする場となる動物。
中間宿主とは…幼虫が発育して増殖する場となる動物。



どこで流行しているの?
エキノコックスは主に2種類があるが、
日本の北海道、や北半球の多くの国に分布しているのは多包条虫という種類。

※日本の本州で稀にヒトや犬、家畜から見つかることもあるが、自然流行はしていない。
(ほとんどが、北海道に旅行や移住して感染したケースと言われているが、そうでない事もある…?)
※最近はヨーロッパで分布が拡大しているといわれている。
(狂犬病予防の成功によりキツネの数が増えたから…?)


どのように感染するの?

ekino.png

①キツネや犬の体内で成虫が卵を産み、虫卵はキツネや犬の便と一緒に体外へ排出される。
         ↓↓(環境中)

②木の実や草などに着いた虫卵をネズミが食べる。
虫卵はネズミの体内(肝臓)で幼虫へと成長。
         ↓↓(ネズミ体内)

③体内に幼虫のいるネズミを、キツネや犬が食べる。
幼虫はキツネや犬の体内(小腸)で成虫へと成長。
         ↓↓(キツネや犬の体内)

①へ戻って繰り返し。

重要なのは、
ヒトやネズミ⇒ エキノコックスの虫卵が口から入って感染。
犬やキツネ⇒ エキノコックスの幼虫を持っているネズミを食べることで感染。


ヒトからヒトへ、犬から犬への感染は?
必ず①→②→③→①→…という順番でしかエキノコックスは成長・伝播しないので、
中間宿主同士の感染はない。(ヒト同士やネズミ同士、ヒトとネズミの間で感染しない。)
終宿主同士の感染はない。(犬同士やキツネ同士、キツネと犬の間で感染しない。)

※終宿主であるキツネや犬が虫卵を食べても感染はしない

※重要なのは犬やキツネ→ヒトへの感染

P1000871.jpg
マルコ「じゃあ、マルコはキツネのうんこ食べてもいいんでしょ?」

…そりゃあ、マルコがエキノコックスに感染することはないけど、
私、マルコの口触れなくなるじゃん!
てか普通に汚いから止めて!!( ̄Д ̄)


感染した犬の症状は?
小腸に寄生するが、ほとんどが無症状。
多数寄生の場合、下痢をすることも。

感染後、約1カ月で便と一緒に虫卵を排泄し、
稀に成虫も排泄されることもあるが、肉眼では分からない


感染したヒトの症状は?
卵から幼虫となったエキノコックスが主に肝臓に寄生し癌のように増殖し、腫瘤をつくる。
肝臓は腫大し、やがては深刻な肝機能障害に。
幼虫の成長はゆっくりなので、初期には自覚症状がなく、発症するまで10年ほどかかる。
子供では進行が早く、数年で発症。
治療しないで放置すると、死に至る。



犬の治療は?
駆虫薬(プラジカンテル)の投与により、駆虫可能。
(ただし、この駆虫薬は虫卵には効果がないので、虫卵は熱処理によって殺滅させる必要がある。)

犬がネズミを食べてから、便に虫卵を排出するまでは25日ほどかかるが、
感染20日目までに駆虫薬を投与すれば、まったく虫卵を排出しないで済む。
※駆虫しないと、成虫は増えることはないが2~6ヵ月ほど生存し、その後自然に体外へ排出される。



ヒトの治療は?
ある種の駆虫薬が効く場合もあるが、
ほとんどは外科的に肝臓の病巣を切除するしかない。
(発症後では、完全に病巣を取り切るのは難しい場合が多い。)



犬の予防は?
予防として駆虫薬の投与もありだが、
とにかくネズミを食べさせない!
(海外の場合は、リスやモグラも!)

ドッグラン以外でノーリードに絶対しないこと!
ランでも屋外ならネズミが侵入する可能もあるので、犬から目を離さない。

※ネズミを食べてしまった可能性があるなら、
早めに動物病院へ行き、検査を依頼しましょう。


ヒトの予防は?
キツネなどの野生動物に絶対に触らない
(海外の場合はコヨーテやオオカミも!)
犬(特に自分のわんこ以外)と触れ合ったら、よく手を洗う。
沢水や湧水は飲まない山菜などは洗って十分に加熱する。
(虫卵は湿気と低温に強いが、乾燥と高温に弱い。)


実際どれくらい流行ってるの?
• 世界には現在、約10~30万人のエキノコックス症患者がいる。

• 日本では、1937年の発生から現在まで累計600人あまり。
毎年10人くらいずつ増加し、数名ずつ死亡している。

• 北海道のキタキツネの感染率は毎年約40%と高め。
• 野ネズミの感染率は1%以下と低いが、北海道には感染ネズミが存在するという事を念頭に置くのが大切。
• 犬の感染率も約1%だが、ここ数年はデータ不足らしいので
本当のところは…?
※ちなみに猫の感染率は約5%と犬より多いが、
体内での発育が悪く、虫卵を排出するのは稀。

P1000050.jpg
正しい知識を持っていれば、極端に恐れることはない病気だけれど、
エキノコックス流行地域を訪れる時は、人間もわんこも注意して行動しましょう♪

↓↓応援よろしくお願いします↓↓
にほんブログ村 犬ブログ MIX大型犬へ
にほんブログ村


↓エキノコックスによる悲しい歴史。



北海道の美しい島、礼文島の悲劇

3556068078_2bbdf4db68.jpg
by:m.maddo


大正時代に、野ネズミ対策と毛皮生産目的で、千島列島から礼文島にベニギツネが移入されたが、その中にエキノコックスに感染しているキツネが混じっていた。
エキノコックスは礼文島の野ネズミや犬に寄生し、島内に広がっていった。

昭和12年頃に最初の感染者が見つかり、昭和38年までには、認定されているだけでも患者数131名、死亡者数は103名までに昇った。

昭和23年から行政は、キツネはもちろん、野犬と各家庭で飼われていた飼い犬、全頭を殺処分した。
殺処分された犬の数は約250頭までおよんだ。
犬を連れていかないでと泣き叫ぶ人、自分の犬を縁の下等に必死で隠そうとする人…。
そんな光景が島内でたくさん見らたとのこと。

感染が完全に終息する昭和45年までは、礼文島内では犬と猫の飼育は禁止されていた。

***************************************

私は獣医学生時代に、寄生虫学の授業で、この礼文島の悲劇についてのドキュメンタリービデオを見て
とてもショックを受けたのを覚えています。

当時の医療レベルや保健衛生では仕方なかったにせよ…。
あまりにも悲しすぎる事実です。

島民の方々は、やはりトラウマで犬を飼育できなかったり、犬を怖がる方も多いようですが、
現在の礼文島では少数ながら、わんこと暮らしている方もいるようですね。

関連記事

Comment

アトムパパ says... ""
北海道に住みながらエキノコックスの事を
あまり知りませんでした!

勉強になりました。

しかし、悲しい事件があったんですね!(泣)
2013.10.15 21:29 | URL | #- [edit]
はるこむし says... "Re: タイトルなし"
アトムパパさんこんにちは♪
確かに感染率は高くない病気なので、
なんとなく怖いことは知っているけど…
という方が北海道でも多いのかもしれないですね。

私も含め本州の獣医師は、
エキノコックスの事は国家試験の勉強以来、
まったく触れる機会がないので、
今回まとめてみて、自分でもいい勉強になりました(^^)
2013.10.17 00:44 | URL | #- [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://marco0606.blog.fc2.com/tb.php/18-3e56b0f5